全年齢です。

※ネタバレが全くないわけではない

※真面目です





【更新履歴】
4/20 記事作成




【概要】
――女の子を好きに為ったらいけないんですか?huea
発売日:2014年4月18日
Innocent Greyより発売
公式サイト



【ストーリー】
高い塀と森に囲まれたミッションスクール、聖アングレカム学院。
美しい少女たちが集う閉ざされた学院に、心に傷を持つ少女、白羽蘇芳(シラハネ スオウ)が入学する。
とある事情から内にこもり家族以外の者と触れ合ったことのない彼女は、擬似的に“友人”を作らせ学院での全てを共にさせる“アミティエ”と呼ばれる試みを行う学院に惹かれたのだ。

学院からあてがわれた仮初めの友、彼女らへ向けられる仄かな恋心。
緩やかに流れる学院生活の中で起こる、学院生徒の不自然な消失……。
少女たちは学院の中で何を見、何を掴むのだろうか―――。



【構成】
主人公の蘇芳を除いて女の子は8人登場し
選択肢も多い部類だけど分岐はあまりない。
が、百合というテーマにおいてこれは正解だったと思う。

ミドルプライスなだけあり尺は短い。
ただ話ごとの区切りがすっきりしていてテンポ良く場面が進み
普段18禁PCゲームやってるせいかエロシーンがないぶん相対的に物語の部分が長く感じた。
そのため「短い!」とは思わない。
冗長でもなく、スカスカでもないという良い塩梅でした。

イノグレにしては攻略・分岐がかなり易しい。
攻略サイトや大型掲示板での情報がいらないイノグレとか久々。



【シナリオ】
キャッチコピーの「女の子を好きに為ったらいけないんですか?」や
OPムービー、公式の雰囲気などから『とにかく露骨な百合』が強く、
王道だけど深みないんじゃないかとか思ってたけど
結果として「適当言ってすみませんでした」と謝罪するほどに予想を上回る出来でした。
もうちょいゆるい百合を想像していたけど予想以上に真面目な内容。
ド王道で終わってみればそこまでの捻りはなかったものの
作り込みが行き届いており深みは十分なものと言える。
最近は軟派な百合ばっかなので逆に栄える。
 
主人公の蘇芳の人見知りっぷりに親近感。
百合要素も確かに肝なのだけど、こっちも肝な気がする。
アミティエという制度で身近な人間が出来たのに上手く接することができず、気付けば同じ部屋で生活してる自分よりもクラスの人の方がアミティエと仲が良い。
それに嫉妬する、のではなく「どうすればああやって自然に会話できるんだろう……」と横目に持ってきた小説を読むフリという。なんというか完璧だ。
他にも「楽しそうな場に割って入ることが出来ない」「お茶会に誘われて行ってみたら自分以外にも大勢居て居心地が悪かった」などなど人見知りあるあるのオンパレード。
それでいて『人見知りで他人とうまく関われない』という要素を『かわいそう』や『ボッチかわいい』などに使わず、あくまで『人見知り』として完結して書いている。
そんなちょっと痛々しくも愛おしい主人公の蘇芳は物語の中心にいるにはふさわしく目が離せない存在となっている。
sss
それだけに蘇芳が肌に合わない人もいるだろうけど中盤からの成長っぷり、空気を読んで場をなんとかする蘇芳の姿に軽く感動を覚える。成長物語としてもよく書けています。



【ミステリ要素】
huea3
推理パートはあるものの数個の選択肢から選ぶもので
わからなくても総当たりは十分可能なレベル。

肝心のミステリ要素は……ちょっと弱いかなと思った。
イノグレのミステリ自体あんまり肌に合わないせいもあるんだけど
あくまで蘇芳視点での推理なのである程度の教養と知識が求められるし
それまでの会話の中にヒントがあるんだけど簡単に振り返れなかったり
プレイヤーと蘇芳との間に情報量の格差が割と大きかったり
いかんせんプレイヤーに解かせたいのか、そうじゃないのかよくわからなかった。
しかし、ここは通常のADVと違って『プレイヤー=蘇芳』ではないので
そういう演出なのかなーとも思ったり&イノグレ的にはいつも通りか。

『ミステリ要素はいらなかった』はない。
やっぱり謎解きは物語に良い緊張感を与えてマンネリさせないし、
しっかり緩急になっていたので必要だったと言える。

なんにせよ総当たりできるので「推理苦手だわ~」って人でも安心設計。



【百合要素】
精神的な繋がりを重視し、
肉体的要素は薄め、
そして古来の百合の論法に近い今作の締めを見る限り、
近年、世で流行ってる百合に比べると大変硬派です。
『かわいい女の子を出して、とりあえずイチャイチャさせときゃいいよ』ではない。
『女の子同士である意義』がある内容になっていて鼻につかなかった。

キャラクターのかわいさで乗り切ってる場面も少なく、繊細な心の機微の積み重ね、ミドルプライスの尺でありながら紆余曲折あって、その先にある結末に思わず溜め息である。しっかり出来ている。
あと百合に限らず同性だから、友人だからこそ言える台詞が多く、このへんは読んでて新鮮に感じたかも。



【絵】
CGがいずれも素晴らしい。
スギナミキ先生の絵が好きならそれだけで買いまである。



【BGM】
イノグレのBGMは良いんじゃー!
とりあえずサントラ買って正解だったぜ、くらいには良い。



【システム】
『次の選択肢まで飛ぶ』が正義すぎてもうね……。
虚ノ少女もこのシステムがあればと悔やまれる。



【統括】S
huea2

期待値/実際値:70/90

絵や演出、BGMなど脇を支える要素がいずれも高水準。
シナリオも手堅くしっかりと仕上がっている。
百合に関しては実際のところ自分の百合への造形が浅いので
歴戦の百合好きからどうなんだろうという部分ではあるものの
微妙に百合かじってて「一回ちゃんと百合ゲーやってみたいな」って人にはオススメ。
自分は存分に楽しめました。

4部作の1作目ということでラストは続きありきでボカしてる部分があり
人によってはスッキリしないだろうけど余韻はたっぷり。
ボカされた空白をそれぞれが補完できるような材料はそろっており
その想像で次回が出るまで胸を詰まらせておくと良いのかもしれない。

そして今日スギナミキ先生より二作目である夏篇が
年内発売目標で開発を開始したことが発表。
このペースだと生きていけるかな?(大げさ)



他PCゲーム感想